Mythology

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あなたが教えてくれた、あなたのもう一つの『ものがたり』

すべてのものは誰かの作品。たとえ異彩を放とうとも、それは全体の作品の1つとなる。

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札幌の桜は、GW前にやっと開花宣言。上京するまで、見たことのある桜の花の色は全部、白だった。ピンク色の桜は、東京で初めて見た。綺麗で、儚いと思った。白い桜を見ても湧かない感情だった。色彩は何かを訴えかけてくる。夕暮れの空の色がほんの少し違うだけでも、胸に湧く感情はいつもと違う。その景色が美しいから感動するのも、感情に訴えかける配色が、その景色を「美しい」と思わせてくれるのも、きっとどちらも正しい。色彩が与えてくれるものは想像以上に大きい。ピンク色の桜の花も、あの白い桜の花も、なぜその色をしているのか、おそらく意味があるのだと思う。

 

 

 

【すべてのものは誰かの作品。例え異彩を放とうとも、それは全体の作品の1つとなる。】

 

 

 

知らない街を歩く。先月は関西に二度足を運んだ。一度目は大阪。その中心地はネオンが眩しい。市街地は随分と落ち着いているけれど、街の中心地はごちゃごちゃとひしめき合っている。その時に歩いた場所の一角(だけじゃないけど)は、今まで培った免疫力を強化させるかくらいには、随分と汚れているように見えた。ここから先は危険!と、異臭と共に教えてくれるような、それも親切心みたいなのかもしれないと思った。その街では、あちらこちらで、「我此処に!」「我先に!」と互いに主張している。よく東京で見かける忙殺されて弾丸のように歩く人とは違って、大阪は本物の凶悪な鬼には到底なれない、与えられた小さなテリトリーで叫ぶ「小さいオニ」みたいなのがたくさんいるなぁ、と思った。もちろん、そういう人たちばかりじゃない。良い人も、親切な人も、素敵な人だっている。けれど、そういう人たちや、そこに自分に見合う何かを見つけた人たちで、その街はどんどん組み立てられていく。自分に見合わないと思った場所には、あまり長居できないのかもしれない。中心地をぐるりと歩いてそんなことを思った。

 

 

二度目に向かったのは奈良。奈良は非常に落ち着いていた。奈良は街中どこにいても空が開けていて、遠くを見渡せば山が視界に入ってくる。街と自然のバランスが理想的だと思った。けれど奈良は、日本のどこよりも歴史が古いのに、何も語ってこなかった。観光客もとりわけ少ないように思う。現地の人もなんだか小ざっぱりとしている。夜になると早々に店は閉まり、大通りでもほとんど人は歩いていない。そして、何かこの街について尋ねると、あまりよく知らないからか、どこかはぐらかされてしまいそうな感覚すらある。中にはちゃんと話をしてくれる人もいる。でもそういうことではない。 

閉鎖的ということでも決してないのだけれど、街全体に、重要なものが明るみに出ないよう、何か抑え込むかのような空気感を感じた気がした。上手く言えないけれど、それが奈良全体に知られてはいけない秘密を抱えるかのようだった。それぞれの建造物や街並みに歴史はある。大仏もある。なのに、その地が総じて表現しているものの核心には、絶対に触れさせてくれない何かがあるかのような。それがまた、何度も何度も来たいと思ってしまう。

 

 

 

自然以外の場所や物はすべて、人が作る。街であれば、街がその地にいる人たちの1つの作品。それは動画のように止まることを知らなくて、好き勝手に、バラバラに何か生み出しては、街全体が何か言葉を発するようになる。息を合わせて、せーの!で作るものではなく、あらゆるものが混在して、やがてそれが1つになる。そこにいるすべての人たちの意識の集合体として街は今日もざわめく。魅力的な土地というのは、そういう街全体が発しているその「なんらかの言葉」が、とある人の心を掴む。そういうものに惹かれて、きっと人はその地を訪れるのだと思う。

 

今回はたった二つの県を歩いただけなのけれど、京都も兵庫も和歌山も、過去に歩いた好きな土地。関西と一言で言えど、その地に降り立つと全くの別物だった。隣街でも隣県でも、現地に住む人たちが頻りに「括るな」「一緒にするな」と言いたがるのは、明らかに放っているその「なんらかの言葉」が違うからなのだと思う。そしてその人たちは、きっと自分の住むその地を愛しているのだと思う。目には見えないその言葉を聞こうとすれば、見えないものも見えてくる。そして、これから新たに芽吹こうとしている面白い何かを、その言葉を、見つけられるかもしれない。街を歩くとき、何かを自分の手で作り出すとき、耳を澄ませば、これからこの世界で、どんな言葉が生まれようとしているのか、ちょっとだけ聞こえてくるような気がした。

 

 

 

また、奈良に行きたい。

 

 

 

 

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