Mythology

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あなたが教えてくれた、あなたのもう一つの『ものがたり』

所有しないは、「足りない」ということではない。その時々の「適量」があれば、人生は事足りる。

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 1ヶ月ほど、バックパックならぬリュック1つで放浪していた。そのリュックの中身は、3日分の着替え、洗面道具、化粧道具、パソコン&充電器、ノート、本1冊、そして少々のお菓子。宿のコインランドリーで洗濯すれば、着るものに困ることもない。年中やっても劣化やシーズンごとにお気に入りの質の良い3着があればいい。消耗品はその都度現地で調達する。本は読んだら売って、新しい1冊を買う。リュックの中はいつも風通し(循環)が良い。だからこそ、あらゆる面で品は保ちたいと思う。品が欠けてしまえば、素敵な出会いから自らを遠のかせてしまうような気がする。

 

 

【所有しないは、「足りない」ということではない。その時々の「適量」があれば、人生は事足りる。】

 

 

 

旅の途中で重くてあまり重要ではないものは捨てた。そして失くしもした。宝物を持ち歩くわけではなく、生きるのに最低限の荷物だけ選定した物全ては、一応無くなっては困るのだけれど、いくらでも補塡がきく。こんな生活を機に、それまで大切に保管していた物や、もしもの時にとっておいた物は、所有することで「安心感」が得られるどころか、別物になった。いつしか手に入れたはずの、持っていると安心する、もしもの出番を待つ物のほとんどは、生きてゆく上で機能しない物に変わった。 必要なものは、必要な時に手元に入ってくる。そう思うと、生きるのに必要なものは、リュック1つで事足りてしまう。

 

自分の周りを埋めていた物は、必要なものと、それ以外の心を充実させる何か。満たされない時に手にするのは、安心感、虚栄心、所有欲を満たすもの。だけど、本当に欲しいものは、いつだって瞬間で生まれる何か。瞬間のために所有するか、その瞬間のために手放すか。一通り放浪したあと、今までの世界が逆さまになった気がした。

 

「持ってるものを全部出して、必要なものだけ選べば良い。あとは捨てるなり、流すなりすれば良い。」

 

そんな潔いことを言いながらも、断捨離は死ぬほど苦手で、いざ手に掛かるとやってる間に必要なのか必要じゃないの軸が、途中でブレブレになる。
苦手なことをすると、エネルギーを大量浪費しているような気持ちになる。非常に燃費が悪くて、その空間に悪質なものすら分泌している気分になる。目の前の変化が微々たるものなのに、全身から奪われていくものの量が全く割りに合わない。これは世界のためにもきっと良くない!と言い訳をして、全部捨てるか、全部持ち越すかの極端な選択肢を取りたくなる。けれど、この最強すぎる断捨離術を伝授されて震えた。ひとつひとつ吟味して選定する方法なんかではない。「ここから選べ。必要なものだけを。」というものだった。そんな無慈悲な!と思った。目の前に並べられた数百個全ての思い出が一気に返り咲きするような感覚になった。さっきまで調子のいいことを書いておきながらも、一品一品の物語を語りそうになった。

 

結局、その斬新なる方法(一般的なの?)で、荷物は2分の1くらいに減った。私の所有していたものは、必要と思えば必要で、必要じゃないと言えば必要じゃないものばかりだった。けれど、軸さえ定まれば時間も思った以上に掛からなかった。多分、私が断捨離でエネルギーや時間を大量浪費していたのは、必要かどうかではなく、使えるけど使う予定がなくて捨てるのにはしのびない物をどうするかだった。勿体無いと言えば、使われるアテもないまま、このままいつまでも所有し続けることになる。たぶん、それが、巡りの悪いダムみたいになってしまうのだと思う。必要なくなったものは必要とする人の手の元にうまいこと流れていく。もうこれ以上物を増やさない、不要なものを手にしないことを誓い、選抜で落ちていった物のほとんどはリサイクルショップへと流れていった。

 

 

生きていくのに本当に必要なものは、少しだけ。1週間でも1ヶ月でも、最低限の物で生活してみると、「物を持つ量」と「品質」が、自分に見合ったものへと整うように思う。これからのライフスタイルでの適量とは何か?それを問うこと。それは、身の回りのあらゆる巡りを整えることになる。それは巡り巡って、自分の手から放たれるものの質も変わってくるのだと思う。余分にではなく「適量」。そして囲まれたいものと同等の「品質」。それが整えば、あらゆるものは勝手についてくる。変化の時、ブラッシュアップのたびに、また必要な場所へと流せばいい。身の回りにあるもの。できればそれは、使える、役立つ、ではなく、私は美しいものに囲まれていたいだなんて思った。