Mythology

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あなたが教えてくれた、あなたのもう一つの『ものがたり』

【絵画から物語を考えるシリーズvol.5】

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出発してから夜明けを迎えようとしていた。空が微かに明るくなると同時に、飛行場から飛び出したイエローのプロペラ機が、水平線に浮かぶ島の方角から一直線に飛んでいた。

太陽に明るく照らされ始めた海面を風で切り込むように、彼女のプロペラ機は低空飛行を続けた。水しぶき舞い上がり、それは島からの軌道を描いているかのようだった。 
 
 
「こんなに気持ち夜明けは久しぶりだわ!ひゃっほう!」
 
彼女の操縦の腕前は、飛行艇乗りも驚くほどに自由で軽やかだった。海面ギリギリを飛んでいた機体をグンと起こして大きく旋回し、波はそのプロペラ機の動きに合わせて大きく波立つ。気が済むまで高度を上げ、宙返りしてはまた波と戯れる。次々と起こる波が、彼女の抑えきれない胸の鼓動に応えてくれているかのようだった。
 
 
「あなたたちも心が踊っているのね!」
 
 
彼女は海が好きだった。海は意志を持っている。彼女は小さな頃からそう信じていた。自然の持つ力が自分の心と共鳴している。そんな感覚になるのは、そう珍しいことじゃなかった。自分の気持ちを解放し、表現することは、彼女にとってこの星との会話することだった。

彼女は海との会話をしばらく楽しんだあと、海に別れを告げて、太陽の光で煌めくプロペラ機は空高くへと消えていった。

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title:『Go through the waves

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